酒が日常的になるにつれ、以前から「麹座」による糀の独占を良く思っていなかった人たちの我慢は限界に達していました。
酒蔵と寺院です。両者とも「麹座」から糀をわざわざ買って、酒を造っていました。
すでに糀と蒸し米、水を2、3回に分けて仕込む段仕込みや、木炭のろ過も行われていたようです。
職人の気質としては、もっと美味しい酒を造りたい。でも、肝心の糀は買うしかないのでは、腕が生かせない。
寺院にしてみれば、商売敵の神社から糀を買うのも面白くない。
酒の消費量が増えて、「麹座」の糀だけでは間に合わないこともしばしばでした。
それで、こっそり糀を造ったりするところもあり、「麹座」が訴えて摘発されることもありました。
両者の確執は高まり、ついに「麹座」が襲撃されるようになってしまったのです。
幕府が困って、糀独占の緩和策を考え始めたところ、今度は「麹座」が猛反発しました。
「麹座」は北野神社に結集して、幕府に反撃しました。
そうなっては仕方ないので、「麹座」は幕府によって制圧されます。
こうして「麹座」制度はなくなり、酒蔵も寺院も堂々と糀から酒を造るようになりました。
酒と糀の技術は、各地、各蔵で競い合うように向上していきます。
江戸時代には、フランスの細菌学者パスツールが低温殺菌法を発見する前に、火入れと、アルコール(焼酎)添加まで行われていたのです。
酒に対する情熱ってすごいですね。
酒造技術の発達とともに、味噌、醤油、酢、みりんなどの発酵調味料も広まり、全ての元である糀の研究も進みました。
糀は、それぞれの目的に合った糀に分けられていきます。
あらめて糀発酵の専門である「種糀屋」もでき、また、味噌、醤油、酢、みりんも専門職、独自の蔵ができあがっていくのです。
小池糀店では、お味噌用の種糀を京都から取り寄せています。米と相性が良くて、白くきれいに発酵してくれます。
一般的に、味噌用にはタンパク質をよく分解する種を、酒用にはあまり分解しない種ものが選ばれます。
タンパク質が分解するとアミノ酸になりますが、酒の場合、アミノ酸が多いとコクが増し、雑味も出やすいからです。アミノ酸が少ないと、流行りの淡麗になります。
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